田路貴浩研究室
京都大学大学院工学研究科建築学専攻 建築設計学講座 生活空間設計学分野
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研究室の概要

基本の方針 / 研究のテーマ / 設計の活動
准教授 田路貴浩

基本の方針

「建築論の探究と建築設計の実践」

建築論とは、「良い建築」とは何かを根本的に問う学問である。近代の科学技術は本来的に価値中立的である。より高く、より速く、より軽くなど、技術の目標は自明とされていて、何が良い技術かを問い直すことはされない。しかし、人間の生活環境の構築を任務とする建築技術においては、何が「良い」建築なのか、その人間的な価値や理念がつねに問われなければならない。これが建築論の最大の課題である。建築論とは、建築技術の根拠を問うことであり、それが向かう方向を理念として提示することである。

「建築」と呼ばれる事象は、建築物を中心に一方に制作者の構想や制作、他方に使用者の使用あるいは経験という人間的出来事を包含している。


〈制作者〉─構想・制作─〈建築物〉─使用・経験─〈使用者〉


したがって、建築論が論じる対象は、制作者の制作(建築物はどのように構想され、つくり出されるのか)、建築物の構成(建築物はどのように成り立ち、構成されているのか)、使用者の経験(建築物はどのように出会われ、経験されるのか)という三つの位相に広がっている。建築論はこれら三つの位相について、あくまで制作者の制作の立場から問う。それは「良い建築」を制作するという動機を出発点とするからである。これは対象のなかに、論者の立場が含まれることを意味している。

しばしば、建築家の構想の源泉や、直観や好み、あるいは制作の方法や規範や理念が建築論として語られる。これらは制作の現場で活動する建築家の生き生きとした精神の表明である。これらが建築論であることは間違いない。しかし、学問としての建築論はこれとは異なる水準にある。建築家が制作の現場で語る建築論は実践的あるいは事実的水準にあり、そこでは直観や無意識など非反省的な精神が大きく働いている。それに対して、非反省的な部分も含めて建築的事象の全体を反省し、普遍的原理を理論的に探究する反省的・原理的水準がある。

たとえば、実践的水準にある建築構造力学は、原理的水準に位置する物理学のうえに成立している。同じように、建築論は、人間的な諸価値、諸経験、精神活動の普遍的な原理を探求する学問、哲学へと通じるだろう。したがって、学問としての建築論は実践的・事実的水準と反省的・原理的水準の〈あいだ〉に位置すると言える。それは事実的な建築的諸相を出発点としながらも、そこから原理的なもの、普遍的なものを見いだそうとする。またその逆に、原理や普遍から個別の建築的事象の意味を解釈し、価値を評定することになる。

実践的・事実的

〈学問としての建築論〉

反省的・原理的

ところで、建築的事象の三つの位相の中心には建築物があると述べたが、今日の建築学では、中心に置かれるのはもはや単体の建築物に限られない。都市や風景もその中心的対象とされ、主題とされている。建築論は都市論や風景論を含むまで広がっている。

学問としての建築論は原理へと遡行する。しかし、それは冒頭で述べたとおり、あくまで「良い建築」を模索するためであり、「良い建築」を制作するためである。したがって、学問としての建築論が普遍的原理へと向かうのと同時に、個別の建築物の制作へと向かうのは当然である。建築論の探求は建築設計の実践も含んでいなければならない。これは、学問としての建築論は実践的建築論へと通じていることを意味している。建築論と建築設計はこのように、三つの位相と二つの水準のあいだを行き来しながら深化していくのである。

研究のテーマ

「地球環境時代の都市・建築論の構築」

地球環境が危機的局面に向かいつつある今日、人類は近代以来の価値観や社会システムの見直しが迫られている。人類学的なパースペクティヴで都市や建築のあり方を再考していきたい。

建築論 「建築家研究」
建築家の制作を巡る精神の営みを解明し、その作品の力や意味を解釈する。

「建築論の基礎概念」
「建築」「空間」「場所」「身体」「自然」「超越」などの建築論のなかで論じられてきた重要な概念を総括し、その現代的な意義を考える。
都市論 「モダニズム都市論の再考」
現代都市に大きな影響を与えてきた20世紀の建築家の都市論を批判的に見直し、新たな都市ヴィジョンを模索する。
風景論 「庭の風景から都市の風景へ」
庭を自然と建造環境との接点にあるものと捉え、人間環境における自然の存在様態と存在意義について考える。

設計の活動

設計プロポーザル

自治体、地域住民、建築関係諸団体などに対して、都市建築、住宅、都市デザインなどの提案をおこなう。現行法規や経済システムを批判的に検討し、現実に対して問題提起的な建築デザインをスタディする。

実施設計・設計競技

プロポーザルを発展させて、積極的に取り組みたい。